ワタシ流・『サポーター』の作り方
初めまして。
著者の名前は覚えてもらわなくても構わない。
この記事は、TRPG Advent Calender 2020の12月21日の記事である。
TRPG Advent Calendar 2020 - Adventar
この場ではあるが、TRPG Advent Calender 2020主催のくずもち殿に深く感謝申し上げたい。
なお、当HPはこの記事を書くためだけに開設したのでそれ以外は基本更新されることはないだろう。
ここでは、『英雄武装RPG コード:レイヤード』(以下、『コドレ』)というTRPGシステムにおいて、私が作った(あるいはやらかしたとも言う)「おおよそ最強の支援キャラ」についての備忘録を兼ねた話と、そこから派生した「支援役って何だろう」という定義を書き記す。
そして、いつか私が斃れた時、これを見た誰かの、その後のTRPG人生における手助けになりはしないか、とほんのすこしばかり願いを込めたものである。
前半に関してはコドレ内の専門用語が連続するため、およそ人に見せられるものではない。
コード:レイヤードの公式HP
拙い記事だが、楽しんでもらえると嬉しく思う。
1.備忘録-1 縁と悩み
まず、何故私がコドレでこのような経験をすることになったのか。
元々、コドレが今のように――名古屋圏内の一部の界隈で爆発的に人気なのである――流行り始めるより前に、私は四年前の基本ルールブックが初版の段階でコドレを追い、追加サプリが発売するたびに買い揃えてはいた。
とはいえ、発売当初はコンベンションなどでちらと見かける程度であり、今ほど大きなブームを肌で感じることはなかった。
実際、年が経つにつれ、徐々に廃れていったのは私も認知していた。
多少立てることはあったが……GMに慣れてなかったこともあり、自分で満足がいく結果だったかと言えば、はっきり言ってノーである。黒歴史のたぐいだ。(しばらく経った今でも、関係者には本当に申し訳ないという気持ちでいる)
色々なことがあって、いつしか彼らも本棚の隅で埃をかぶるようになっていた。
そんなある日、丁度一年ほど前のことである。
上述の関係者のツテだったか、あるいはそれ以外の「偶然」だったか。
もう自分でもはっきりと覚えていないのだが、「コドレが再燃している」ことを知る。
それも、中核メンバーこそいるものの、毎話PCが変わるという非常に特殊な構造のキャンペーンシナリオだった。
総合GM殿と交渉し、飛び入り参加の許可を得た。温かく迎えてくださった総合GMさん、およびPLの皆さんにも深く感謝したい。
これから日程を練り合わせていく……その前に早めにキャラメイクを済ませておく必要がある。
そう考え、ルルブの埃をはらっていた私は、ふと思った。
――何を作ればいいんだろうか。
2.備忘録-2 仮案の作成
当時のコドレのキャラメイクはおおむね、
- 「どんな戦闘スタイルか」が決まる3個のスタイルクラス
- 「どんな方法で戦うか」が決まる9個(現在は10個)のレイヤークラス
を最初に決める。
特にスタイルクラスはデータ面において「できること」に直結する。
とはいえ、相手は長期キャンペーン。
新参者の私は、何をすれば正解なのか?
とりあえずこの段階で、「全てのスタイルクラス分(3キャラ)作ってしまおう」と仮案を作成した。
ちなみに、スタイルクラスは以下の3つである。
- 戦闘、特に1vs1の場面に非常に強い「ブレイカー」
- 複数の敵への攻撃や妨害、カバーリング(味方のダメージの肩代わり)など、戦場のコントロールに強い「チェッカー」
- ダメージ軽減やダメージ増加、回復など、仲間の支援に強い「サポーター」
ただ、これだけではまだ確証が持てなかった。
仮案は仮案のままだった。
この時、ブレイカーのデータだけ作成した。が、すぐに引っ込めることになる――他メンバーとやりたいことが完全にかぶっていたためである。
そこで、「当日の参戦卓のメンバー状況を考えておこう」と思うようになっていた。
その時にふと思ったのが――「万能型サポーター」である。
3.備忘録-3 「万能型」
万能型。
ソーシャルゲームなどでよく聞くその二文字は、同じデータゲームとして魅力的なものであるのと同時に、「ほぼ不可能」という暗黙の認識があるだろう。
なぜなら、「万能」=「器用貧乏」ではいけないからだ。
大体、TRPGやTCGなどにおいては、一つ「特徴」、「個性」を作り、それを主軸に色々なスキルをとっていくほうが断然楽であり、構築として非常に強いのだ。逆に、有限なリソースで色々あれやこれやと手を伸ばし過ぎると個性が弱くなり、それが「器用貧乏」と言われる原因になりかねない。
強い口調になってしまうが、特化した構築を目指すならば、絶対に個性を弱めてはならないのだ。
コドレにおいて、それは「コード」になることが多い。
そもそも「コード」とは、そのキャラクターが使う「英雄の力」であるからして、PLの好みやPCの思考(我々の界隈ではこれを「理解学」という)などが起因して決定することが多い(もちろん、それ以外のケースもある)。
故に、そのコードを引き立てることが多い。
だが、万能型はそうはいかないだろう。
どうしても「個性」を出せない――いや、存在そのものが「個性」でなければならない。
コード:レイヤード古参勢としての腕の見せ所だろう。
こうして、私のデータ作成はほぼ「万能型サポーター」にシフトしていった。
4.備忘録-4 同じ土俵で戦わない
少なくともコドレは、「同じタイミングに一つの特技しか宣言できず」、「同じ名前の特技は(テキストにそう書いてない限り)重ねがけ出来ない」というルールがある。
つまりサポーターなどの支援は、極力あれらを心掛けなければ、思わぬ事故につながることがあるのだ。
つまり、これからサポーターを組むために、他サポーターの大まかなデータ傾向を探る必要があった。
その中でも特筆すべきサポーターは三人いた。
一人は回復特化。
一人は火力特化。
そしてもう一人……「万能型」がすでにいた。
この段階で「万能型サポーター」に完全シフトしていたのだが、その構築を聞いて、ある事を思ったのである――競う必要はないんだと。
その万能性をどう引き出していたのかに注目する。
先に参加していた「万能型サポーター(仮に『サポーターA』としよう)」はタイプ:センチネル――『自立型』といい、コードそのものを顕現させて戦う――のサポーターであった。
センチネルのデータの特徴は、その種類の多さにある。
基本的に多機能であり、攻撃から支援まで、なんでも卒なくこなすことができる。
文字通り「万能型」にふさわしいデータ構築であった……が。
競う必要はない。
リソースは有限……ならば、「やむなく切り捨てた支援」があるはずだ。
それを今回、私の「万能型サポーター(仮に『サポーターB』としよう)」で拾う。
そこで私はタイプ:マージ――自身をレイヤーと一体化させて戦う――を選択する。
マージは、センチネルほど支援に特化したデータを持ってはいない。しかし、「唯一性」と「自己完結能力」という点で非常に優れていた。
センチネルを選べば、圧倒的な支援能力を得られるだろう。しかし、同じセンチネルの土俵で戦えば、「同名特技重ねがけ不可」のルールに抵触し、同卓時にうまく支援ができなくなる可能性があった。
この時だけは、絶対に同じ土俵で戦ってはいけなかった。
5.備忘録-5 完成、もう一人の「万能」
サポーターAの特技は、(効果を要約した状態で)おおまかに以下の通りだった。
-
敵判定への強力な妨害(コード特技)
-
味方判定へのダイスバフ
-
味方が与えるダメージのバフ
-
敵の与ダメージ増加
-
やや強力な攻撃
-
味方の移動支援
彼ができないこと……さらにほかのサポーターでも補填できなさそうなものをこちらで極力ピックすると、サポーターBは何をすればいいのか。
- 敵判定への妨害は、サポーターAのコード特技にすべて任せてよいと判断しピックしない。
- 味方判定へのダイスバフは、個数があればそれに越したことがないという観点から、サポーターAとだけ名称が被らないようにピックする。マージにも同じような判定補助特技があった。
- 味方が与えるダメージのバフは、サポーターAともう一人の火力支援にすべて任せてよいと判断しピックしない。
- 敵の与ダメージ増加は、サポーターAの特技にすべて任せてよいと判断しピックしない。
- やや強力な攻撃は、殴りに参加できる頭数が増えることでアタッカーが受け持つ雑魚の相手をこちらでこなせるようになるため有用と判断し、何らかの形ではあるがピックする。
- 味方の移動支援は、サポーターAの特技にすべて任せてよいと判断しピックしない。
その後は単純な「役割遂行」だけを考えた。
盾役の性能向上を狙いとして、シーン中継続する防御力バフをピック。
大人数乗れ、乗ったメンバーの回避をすべて操縦者が引き受け、さらに攻撃手段を得るヴィークル(乗用車)をピックすることで、回避性能の低いサポーターや一部のアタッカーを乗せて回避しつつ(マージの特技で回避性能を一時的に上げることができるため失敗する確率は低かった)彼らの生存率を上げ、さらにマージ特技による攻撃手段を確保した。
そしてアタッカーの判定補助のためのコード特技をピック。(なおこのコード特技、かなり性能が強過ぎるものの、相談の末総合GM殿に許諾いただいた。ここで改めて感謝したい)
残りはリソースの枯渇対策でステータス上昇とアイテム確保。
と、こんな調子で当時はすんなりとほぼ何も考えずにキャラを作った。
こうして、もう一人の「万能型」がこの世界に生まれた。
キャラクターシートを書き終えて、ふうっと見直した時、ふと感じた。
――美しい構築だ、と。
6.備忘録-6 実卓、そして
実は、最初に参戦が決まった辺りから、少しだけ卓の様子を見学させてもらえる機会があった。
その時に「やらかし」があったが、それも込みで認知してもらえたと自分を未だに責めては慰めている。
とはいえ、他参加者のアウトプットは非常に勉強になった。
どういうキャラを作りたいか。
どういうことを言いたいか。
……どういう戦い方をしたいか。
そういった自分のアウトプットを数か月間しっかりできたこともあり、また大人数が集結した(もちろんその中に参考にさせていただいたサポーターの方々もいらっしゃった)最終決戦の場というまたとない機会もいただき、データの汎用性も相まって、実卓でもかなり印象に残ったと総合GM殿および各PL殿からお褒めいただいた。
「サポーターたちと合わせて、まるで最終決戦兵器のようだった」と。
言われてみれば確かにそうだった。
誰と同卓しても腐る特技がない。
同時に参加する人数が増えれば、それだけこのサポーターの影響力は大きくなる。
盾はさらに硬くなり、生存率があがる。
彼らの被弾が減ることから、支援役の支援回数が相対的に増える。
そしてその支援を受けたアタッカーが火力を出す回数が増える。
「万能型」の強みは、こういう潤滑油のような動き方ができるところにあるのだろう。
現在は、所用あって封印してあるが、また使ってみたいと心の底から思える……人にも、自分からも、愛せるキャラクターができたと思っている。
7.ワタシ流・『サポーター』の作り方
以上が備忘録である。
twitterのDMや実際のリプレイなどを改めて確認し直したが、色々と忘れていた記憶が多かったのが驚きであった。
それに、ここで得た経験はまだ様々なシステムで応用できるようになるだろう。
では、今回の経験を活かした「万能型サポーター」の作り方、その考え方の一例をまとめつつ、紹介しようと思う。
(※これはあくまでも個人の意見であり、この意見をどう活かすかは当人の判断にゆだねられる。完全に鵜呑みしたからと言って完璧なものが完成するとは限らず、またその結果発生したあらゆる責任を筆者は負いかねることを承知の上、参考にしてもらいたい。)
①同じ土俵に立たない
大事なのは「パーティの誰とも支援が被らない」ことである。万能型は特化型に比べ、支援範囲が広い代わりに支援量が乏しい。作りやすく数の多い特化型と同じ土俵で戦うには同じ支援量を誇る必要があり、それをするならば万能型にはならない。
棲み分けこそがこの型の基本だ。
また、パーティに既に「万能型サポーター」がいる場合、当然彼らとも棲み分けること。
これはこの場に限らずそうだが、データを組む際はPL同士の相談を必ず行い、連携を密にしよう。
②PCの特性を理解すること
システムやデータに詳しくなると自ずとできてくることだが、PCデータの特性を理解し、支援をピックする。
そもそも、万能型の前提条件は、「パーティバランスが整っているか」「データ上に致命的な欠陥がないか」である。
自分以外のメンバーが全て支援系と盾系だった……という場合、万能型をそもそも選択していいのか、という疑念を持つこと。
あくまで「パーティバランスが十分整っている」時に、初めて検討視野に入る。
万能型とはそういうものである。
そして万能型の目的は「パーティのほぼ全員に支援の手を伸ばす」ことである。
アタッカーへの支援だけでは特化型と変わらない。
デバッファーや盾役に対してもアタッカーへの支援とは違うアプローチの支援ができないかを模索すること。
同じ支援キャラに対しても何かしらのアプローチができたなら、さらに上出来といえよう。
これに関しては、努力目標程度で構わない。システムによってできることがまちまちである以上、全てのキャラにアプローチするのは難しいためだ。
③支援の幅を広く取る/極力タイミングをかぶらせない
万能型である以上、当然回復だけ、攻撃支援だけ、軽減だけではいけない。
どれをどれだけ取るか、その見極めをしっかり行う必要がある。
ある程度の指針になる取り方は以下のとおりである。
- 支援の幅を広く取る。攻撃支援、ダメージ軽減or防御力増加、判定支援、回復など。なお判定支援のみ(バフ、デバフ含め)2種類以上持っておくと当日便利に立ち回れることが多い。
- 極力タイミングをかぶらせない。セットアップ、マイナー、メジャー、オート、判定直前など、それぞれのタイミングで1つしか宣言できないシステム(コード:レイヤードなど)は当然だが、同タイミングで組み合わせることが可能なシステム(ダブルクロスなど)であっても極力組み合わせすぎるのを避けること。また、マイナーアクションで支援に必要なリソースを回復できるシステム(コード:レイヤードなど)の場合、そのタイミングは極力回復行動に専念すること。
④攻撃手段を確保する
メジャーアクションは「攻撃できる」ことができるように調整すること。
もちろん、メジャーアクションを消費して行う支援をとるのも悪くないだろう。しかし、その支援を撃ち終わった後で「メジャーアクションを使った行動ができない」のならば万能型サポーターとはいいにくい。
アタッカーの倒し損ねた敵キャラを倒せるくらいのダメージで構わないので、攻撃する手段を一つ、取得しておくのが、パーティ内での小回りが利き、痒い所に手が届く印象が強くなる。とはいえしっかりとダメージは入れたいので、ダメージダイスよりも固定値を優先するのが望ましいだろう。
もちろん、攻撃を当てるための判定にも気を配る必要がある。
⑤経験点を確認/特化→万能へのシフトも視野に
万能型は、経験点との勝負である。
潤沢な経験点あっての万能型である。
つまり、「最初から万能型へシフトしなくてもよい」のである。
キャンペーンシナリオの場合、話数が重なるごとに経験点が配布されることが多い。最初は判定支援だけ取って特化させ、そこから経験点を消費して攻撃支援、自力攻撃手段の増強、追加の判定支援、ダメージ軽減……と幅を増やして「万能型」に切り替えていく、という成長プランを考えておくのも一つの手だろう。
キャンペーンの場合、成長プランがほぼ固定されるので、成長込みでの相談をPL間で予め行っておくのがベストだろう。
⑥添削をしてもらう/実戦で慌てない準備を
完成したら、必ずそのシステムに詳しい誰かにコンセプトを伝えた上で添削してもらう。一番ベストなのはその卓のGMだろう。おおむねのデータを伝えておけば、GM側としても敵データの調整のヒントを得やすくなる。
また、万能型は非常に忙しい。当日の卓で慌ててしまいパンクしないように、しっかりデータのタイミングを確認しておくこと。また糖分の摂取を念入りに行うこと。
敵によっては、データに詳しい玄人でさえもTCGの競技シーン以上の思考を要求される場合がある。GM側も、「万能型がいるなら敵で何でもしていいだろう」と驕らず、彼らに余計な負担を与えないよう慎重にデータを組むことを強く推奨する。難しいと感じた場合はPL同士の相談の段階で適宜相談しておこう。GMとPLは敵同士ではないのだ。
おわりに
以上が、私の思う『サポーター』の最終形態である。
もちろん、特化した構築もきちんとしたサポーターであろうと思っている。
あくまで上記のこれらは「たどり着いたゴールの一つ」にすぎない。
それでも、これからもっとデータに強くなりたい、というあくなき探求心を掲げたTRPGプレイヤーの一つの目標点に慣れるのなら幸いだ。
では、よいTRPGライフを。